食用サボテン研究所

食用サボテン研究所

サボテンの新しい可能性に挑戦する
3名に、対談インタビュー!

サボ⼦)
今回、サボテンで和紙をつくったという驚きの噂を聞きつけて、埼⽟県のときがわ町にある⼯房「⼿漉き和紙 たにの」へ⾏ってお話を伺ってきました!
⾕野裕⼦さん(⼿漉き和紙 たにの)、⽮端⻲久男さん(群⾺カクタスクラブ)、倉林輝⽣さん(群⾺カクタスクラブ)
⾕野裕⼦さん(⼿漉き和紙 たにの)、⽮端⻲久男さん(群⾺カクタスクラブ)、倉林輝⽣さん(群⾺カクタスクラブ)

偶然の発⾒、偶然の出会いで
⽣まれたサボテン和紙

サボ⼦)
どんなきっかけで、サボテンを和紙づくりに使おうと思ったのでしょうか?
倉林さん)
はじめは、サボテンではなくてウンカリーナという植物を使おうとしていたんですよね。 ⽮端さんの発⾒で。
⽮端さん)
当時、 倉林さんのハウスにウンカリーナが繁茂していて、切った枝をたくさんもらったんです。 家に帰ってバケツの⽔につけておいたら、ぬるぬるしたものがいっぱい出てきたので、何かに役⽴てられないかなと思って。 その頃にちょうど、和紙の原料であるトロロアオイの⽣産者が⾼齢化でどんどん減っていて、⽣産量も減少しているというニュースをテレビで⾒て、ウンカリーナがトロロアオイを代替できるんじゃないかと思ったんです。
■サボ⼦取材メモ:トロロアオイとは?
トロロアオイは和紙づくりにおいて、「ネリ」という役割を担っています。繊維を水中で均一に分散させ、水の流れを制御し、漉きやすくする働きがあります。この粘性によって、薄くて丈夫な和紙の特性を引き出すことができ、紙質が良くなります。
倉林さん)
ただ、それを実証してくれる⼈がいなかったんですよね。私たちが活動している群⾺県には、和紙をつくっている⼈がほとんどいなくて。
⽮端さん)
そうそう。そうしたら今度は、テレビに⾕野さんが出てきたんです。この⼈なら⼀緒にウンカリーナの和紙づくりに協⼒してくれるのではないかと直感で思って、すぐに連絡して、倉林さんとこの⼯房を訪れました。
倉林さん)
おもしろそうだなと思って、ついてきました(笑)
⽮端さん)
ただ、持っていったウンカリーナからあまり粘りが出なくてね。時期も悪かった。
⾕野さん)
ちょっと薄かったんだよね。
倉林さん)
ウンカリーナじゃだめかとなったときに、⾕野さんから、以前バリでサボテンを使って和紙をつくったという話を聞いたんです。そのときは⽉下美⼈を使っていたって⾔うので、それならウチワサボテンの⽅がいいよって。路地でもどこでも⽣えるほどの⽣命⼒があるので、ハウスなしでも育てられますからね。その話に⾕野さんが興味を持ってくださって、翌⽇に群⾺へウチワサボテンを⾒にきてくれました。
サボ⼦)
⾏動が早いですね!
倉林さん)
⾒てもらって、「これはいい!」となったので、またウチワサボテンを持って⾕野さんのところへ⾏きました。それで、実際に使ってもらったらうまくいって。
サボ⼦)
サボテンがネリの役割を担えたのですね。
ところで⾕野さんは、 どうして⽮端さんと倉林さんに協⼒して、ウンカリーナやサボテンの和紙づくりに⼀緒に取り組まれることにされたのでしょうか。
⾕野さん)
先ほど倉林さんがおっしゃっていたように、バリでの経験があったので抵抗はありませんでした。それと、和紙を守っていく⽴場として、どんなことにも挑戦したいと思っていたからです。
サボ⼦)
みなさんの想いがつながって、このサボテン和紙が⽣まれたのですね。和紙をつくるにあたり、 普段使っているトロロアオイと⽐べて、 サボテンだからといって困ることはありませんでしたか?
⾕野さん)
とくにありませんでしたが、はじめの頃はサボテンの前処理に苦労しましたね。 ⼩さなトゲが隠れていて、とても⼤変でした。 ⽮端さんや倉林さんからは「トゲは痛くない、 平気だ」と⾔われていたんですけど(笑) いろいろ試⾏錯誤して、トマトのヘタ取りを使うようにしたらしっかり取り除けるようになりました。この紙を⾒てください。⾒た⽬や⼿触りはトロロアオイで作ったものと変わらないでしょう?
左がトロロアオイ、右がウチワサボテンを使⽤した和紙
左がトロロアオイ、右がウチワサボテンを使⽤した和紙
サボ⼦)
本当ですね、まったく⾒分けがつかないです!!!

めざすは、1000年の使⽤にも耐えられる紙。

サボ⼦)
サボテンを使った和紙の実⽤化を⽬指しているとのことですが、どんな課題があるのですか?
倉林さん)
和紙の寿命はとても⻑く、耐久性が優れているので古⽂書や絵画の修復に使われてきました。なので、サボテン和紙にも同程度の耐久性があることを証明できてこそ、トロロアオイを代替できると⾔えるわけです。今はその分析を⾏っているところで、 結果を待っている状況です。
⽮端さん)
うまくいってほしいね。
サボ⼦)
なるほど。サボテンでも和紙の強みを引き出すことが証明できれば、今後、和紙業界に⼀役買える可能性があるということですね。良い結果が出ることを期待しています! 本⽇は貴重なお時間をありがとうございました。

~編集後記~

サボ子)
今回、⽮端さん、倉林さん、⾕野さんに、サボテン和紙づくりの経緯を伺いました。
はじめに何かできないかと思って動かれた⽮端さん、実⾏⼒のある倉林さん、そして、和紙づくりに強い想いを持ち、実際にサボテンを使って和紙を作られた経験のある⾕野さん。お話を伺い、この3名が出会ったからこそ、サボテン和紙が実現できたのだと感じました。まだ耐久性については実証段階ということですが、和紙づくりにおけるサボテンの新たな可能性に、今後も期待をしていきたいと思います。

※今回の和紙づくりに使⽤されたウチワサボテンは、太陽の葉(バーバンク種)とは異なる品種です。

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